残念ながら「エアラインパイロット」にはなれませんでした。
僕のいる業界は「ビジネスジェット(プライベートジェット)」の世界です。
「ジェネラルアビエーション(ジェネアビ)」などと言われたりもします。
この業界に僕はどのようにして入ったのでしょうか。また、ビジネスジェットパイロットはどのようなことをしているのでしょうか。
【海外でパイロット】履歴書は会社を見つけたらすぐに送る
とても単純明快ですね。それ以外に仕事を獲得する方法は、人脈の形成ですが、普通は無理かと思われます。
ヨーロッパでは、パイロットに限らず、会社側の都合により、人材が必要になると自社のHPだったり、就活サイトなどに情報が出てきたりします。
毎年決まった人数を採用し、毎年同じように、同じ時期に就活がスタートするわけではありません。
必要になった時に、必要な人数を随時入社させるのがヨーロッパのスタイルです。
入社時期も人によってさまざま。大抵は月初めか月の真ん中でしょうか。
そのため、常にチェックしていないといけません。
僕の場合、エアラインのパイロット募集では、数社以外は返信すらないところが多々。
ビジネスジェットを使用してチャーター便を飛ばしている会社は以前からあることは知っていましたが、どのぐらいの数の会社があるのかは分かりませんでした。
調べてみると、結構な数の会社が存在していることが分かりました。
エアラインよりも会社の数は多い
HPに募集ページがあるところもありますが、大抵はそのようなページは存在していなかったり、そもそも、その会社の情報すらよく分からない、ペラペラなHPもあったりしました。
「募集をしていないと送ってはいけないのでは?」と思うかもしれませんが、「履歴書を受け付けていません。送らないでください‼」と書かれていないところには、履歴書を送りまくっていました。
「送るな」と書いて無ければ、送ってもいい、と判断したわけです。
履歴書を送らなければ、会社側はあなたの存在を認識することすらできません。
その結果、最初の就職先を見つけることができました。
実際、別な会社で採用の仕事に関わった時には、週に何通も履歴書が送られてきていました。
会社側は、良さそうな候補者の情報を保存しておいて、人材が必要になった時に、募集を表に出すことなく、保存していた候補者に連絡をとっていました。
ネット上に募集を出すと、大量に送られてくる履歴書整理に時間がかかったりすることを考えると、ストックしてある候補者にまずは連絡を取るほうが効率的ではあります。
ただ、最近では個人情報保護の問題があり、長期間履歴書情報を保存しない会社が増えているのも事実。そのため、こちら側には言われませんが、どんどん削除している会社もあるので、定期的に履歴書を送ったり(1年に1回程度)、会社のHPをチェックすることは忘れずに!
そのようなことも中にはあるので、エアラインに拘らず、「パイロットの仕事」がしたいと思っているのであれば、会社の大小や飛行機の大きさなどに拘らずに送ってみるのもいいのではないかと思います。
ヨーロッパでは、いい意味であなたの履歴書は異端です。「日本人」「日本出身」「アジア系」というだけで、印象に残ることになるでしょう。
その時点で、弾く会社もありますが、良い印象を持つところもあります。
良い印象を持ってもらった場合、ほかの「一般的なヨーロッパ出身のパイロット」よりも一歩抜け出ていることかと思います。
【海外でパイロット】ビジネスジェットのパイロットは飛ぶだけが仕事ではない
会社にもよりますが、ビジネスジェットのパイロットとして働くようになり、「飛行機を飛ばすだけが仕事ではない」ということを学びました。
主な仕事は「飛行機を飛ばすための準備」や「オフィス業務」
飛行計画書は専門の人や専門の会社に委託しているところが多いですが、自分たちで専用サイトにログインして、飛行計画書を確認してプリントアウト。
滞在先のホテルにいる時にプリントアウトまで行うこともあれば、空港のパイロット専用ルームで行ったり。
また、飛行機に搭載するケータリングの準備も行わないとけません。
小型ビジネスジェット機では、基本的に客室乗務員はいません。パイロット2人での運航です。
そのため、飛行機に搭載するケータリングは自分たちで準備をしないといけません。
ケータリングは大抵の場合、空港のケータリング会社に委託していますが、それらをピックアップして飛行機まで持って行くのも仕事です。
ケータリング会社がないようなところでは、近くのレストランにサンドイッチやカナッペなどを注文しておき、取りに行ったりも。
ケータリングの注文は、会社側が行ってくれる場合もあれば、自分たちで空港のケータリング会社にリクエストすることもあります。
お客さんによっては、シンプルにパン屋さんのパンを希望する人もいるので、そのようなときには、パン屋さんに行ってパンを購入することもあります。
雑誌や新聞はケータリング会社が用意することがありますが、ない空港では近くのガソリンスタンドに寄って、お客さんの年齢に合わせた雑誌や新聞数紙を購入してから空港へ行きます。
飛行機に搭載されている飲み物やナッツ類などが無くなった場合には、滞在先近くのスーパーに買い出しに行って、飛行機に持って行くこともあります。
ケータリング会社を通じて購入すると、通常の倍以上の値段を支払わないといけないことが多いため、自分たちで購入して持って行くことが多いです。
別な会社では、電話番をしたり、メールの内容を確認して、そのメールを必要な人に振り分けたり、採用に関わった時には、履歴書をチェックしてデーターベースにしたりと、さまざまなことをやる必要があります。
会社によっては「パイロットは飛行機を飛ばす専門の人」というところもありますが、他の仕事もやる必要がある会社も多々あります。
ケータリングなどに関しては大抵の会社ではやらないといけないことかと思います。
飛行機の出発まで、飛行機の準備を全部行うのもパイロットのお仕事です。
エンジンなどについているカバーを外したり、ケータリングが動かないように固定したり、機内清掃をして、雑誌や新聞をセッティングしたりもします。
エンジンオイルが少ない場合には、自らが追加したりは普通です。
お客さんをターミナルまで迎えに行ったり、お客さんの荷物の出し入れもパイロットの仕事です。
短距離のビジネスジェット機に乗っていると、実際の仕事量は、地上9割、飛行1割ぐらいの感覚になってきます。
【海外でパイロット】採用試験は会社によってさまざま
エアラインでも同じことが言えますが、ビジネスジェットを運航する会社の採用試験もさまざまです。
エアラインだと、多くが
履歴書を送る→書類審査→アセスメントセンターに送られる(筆記試験)→シミュレーター試験→面接→採用
大まかにこのような流れが多く見受けられます。(大まかに!です)
エアラインによっては、エアライン独自のメディカルチェックがあったりもしますね。
「ある程度、採用過程にお金がかかっている」という印象を受けます。
ビジネスジェット会社の採用試験はどうなのでしょう
僕の経験した採用試験の範囲でお伝えします。
エアラインのように段階を踏む会社もあります。
印象的に、エアラインでは、「確実に落ちる人が存在する」という感じがあります。
100人呼んでも、採用するのは5人や10人、と既に決まっていたりします。
自社養成などと同じような感じですね。
当然ですが、試験を実施するにはそれなりの時間と費用が掛かります。エアラインではそれらの費用を捻出しても、自分たちの理想とする人材を採用したい、と考えているのかもしれません。
ビジネスジェットの運航会社は、印象的には少し違う考えがあるのではないかと、経験上思います。
エアラインと同様に、ある程度の人数を呼んで、その中から厳選した人材を採用する会社もあります。そのような会社は、少し大きめのビジネスジェット運航会社のような気がしています。
大きめの運航会社だと、人事部がシッカリあり、採用に関するコーディネートを行っていたりしますが、そうではない会社では、1人が色々な業務を担当していたりします。
小さ目の会社だと、書類審査の段階で、かなりの人数が絞られます。
履歴書が100通近くあり、その中から会社にフィットしそうな人材をピックアップ。1人採用するのであれば、2人か3人にしか声を掛けません。(以前採用担当で働いた会社はこのような感じでした)
ここからは僕が実際に経験した会社の採用試験の流れです
会社A:筆記試験のあとに、すぐ採点。面接
会社B:シムチェック。数日後、結果が送られる。後日、面接
会社C:面接のみ
会社D:面接、シムチェック
会社E:面接。数日後、結果が送られる。後日、シムチェック
5社のみ経験をしたわけではないのですが、大体はこの5つのうちのどれかになります。
なるべく、その日のうちにすべてを終わらせたい会社が多い印象を受けています。
試験日に採用か不採用かを即座に判断する会社も経験し、実際採用されたことがあります。(帰るときに契約書を渡されました)
このような会社は、書類の段階である程度決めておき、一番最初に自分たちにフィットした人を見つけたら、即採用、という形なのかと思われます。
面接をする人やシムチェックに派遣される企業側の人材も、企業側としては、お金を稼ぐために使いたいと思われるので、そこまで採用試験に時間をかけない印象があります。
採用側の人材には、会社負担で移動費や滞在費がかかりますし、その日を含め数日はお金を稼ぐことに関われません。
小さい会社だととくに、1日に全部をおさめることが多い印象があります。
【海外でパイロット】ビジネスジェットパイロットは初めていく空港が多い
エアラインというのは大抵の場合「定期運航」をしています。
例えば、〇月〇日〇時〇分羽田発ー千歳行などというように、数ヵ月前からスケジュールが決まっていますね。
日付が変わっても、同じ時間に毎日出発していることが多いです。
簡単に言うと、定期運航をしているエアラインは、行き先が既に決まっているため、当然ですがエアラインパイロットは行き先を知っています。
同じところを往復したりすることが多いですね。(会社の規模にもよります)
ビジネスジェットのパイロットは、お客さんの行きたいところに飛行機を飛ばします。
そのため、お客さんが「○○へ行きたい」と言えば、その空港へ行くわけです。
地域ごとに大きな国際空港があったりして、「よく行く空港」もありますが、今まで1度しか行ったことのない空港も多々あります。
大都市から離れた地方都市の、そのまた少し外れたところにポツンとある空港。
定期運航はされていませんが、たまにビジネスジェット機やプライベート機が離着陸する空港は結構な数あります。
とある空港に到着後、乗客を降ろして、別な空港に行く予定だったのですが、突然会社から連絡が来て、行く予定だった空港とは真逆の方にある空港に行った、ということもあります。
行ったことのない空域、空港は行く前に予習をしておかないといけません。地域によっては、空域に入る10分前に、これから進入する空域に無線で連絡をしないと、軍の飛行機が緊急発進するようなところも存在します。
状況次第では、すぐに必要書類を見つけ出して、読まないといけない部分を読んでから、すぐに離陸をしたりしないといけない、ストレス下での運航も多々あります。
大抵の場合、お客さんは数日前~数ヵ月前に予約を入れたりして、行き先が事前に分かることがほとんどですが、突然状況が変わることもあり、切り替えをしないといけない場面に出くわすことが多々あります。
エアラインでパイロットをしていたとしても、行き先が突然変更されたり、スケジュールチェンジなどがあると思いますが、エアラインでは行けない空港に行けたりするのもビジネスジェットパイロットの魅力ではあります。(とは言え、定期運航に憧れもあります)
「定期運航」ではないため、お客さんがいないと飛行機は飛びません。
1日1時間のみ飛んで終了。2日間ホテル待機、4日目に1時間飛ぶだけ。というようなことも多々。景気次第で大きく変わってきます。
状況はお客さんや景気次第で常に変化するのがビジネスジェットパイロットの世界です。
【海外でパイロット】ビジネスジェットパイロットの世界 まとめ
ビジネスジェットパイロットの世界、いかがだったでしょうか。
エアラインとは色々と違う点があると思います。飛行機を飛ばすことは飛ばしますが、それ以外にもやることが多いかもしれません。
採用の流れも、違う部分が多いですね。
「兎に角、何万時間も飛行機を飛ばしたい‼」と考えている人には、物足りない業界かもしれません。
飛行時間は全然貯まりません。
運航に関わる仕事や、パイロット以外の仕事にも興味があり、色々と経験することもいいかなぁ、と考えている人には、良いかもしれませんね。
僕は「エアラインパイロット」に憧れていましたが、今では、この業界で楽しく過ごしています。
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