ビジネスジェットのパイロットと聞いて、どのように働いているのか、想像するのは難しいですよね。
エアラインパイロットだと「3日~5日間毎日数本飛ばして帰宅、2日ほど休んでまたフライト」のような形が多いかと思われます。
長距離を飛んでいるパイロットだと「1本飛んで1日か2日ホテルで休み1本飛んで自宅で休む」というような感じでしょうか。
ビジネスジェットのパイロットは少し違うスケジュールで働いているところが多いです。
実際に見ているビジネスジェットパイロットのスケジュールの実情はこちら‼
大きく分けて2つのタイプに分かれるスケジュール
ビジネスジェットパイロットのスケジュールは会社によって様々です。
大抵の会社は大きく分けて2つのグループに分けることができると思います。
スケジュールのある会社とスケジュールのない会社です。
スケジュールのない会社
その名の通り、スケジュールがないので、常にスタンバイです。
小型ビジネスジェット機を運航している会社に多いスタイルで、拠点とする空港がある会社が多いです。
「拠点とする空港」というのは、例えばフランスのパリにあるビジネスジェット機専用の空港である、ル・ブールジェ空港に会社があり、飛行機は常にこの空港を拠点としているとします。
この空港を拠点としているので、飛行機は常にこの空港に戻ってきます。
会社としては必要最低限の人材にしたいと考えるので、パイロットは常にスタンバイにしておきます。また、住まいも空港から車で1時間以内にすること、などと指定していたりします。
お客さんを乗せて目的地空港へ行き、そこで次のお客さんが見つかりそうにない場合には、空(カラ)の飛行機で拠点空港まで戻ってきます。
常にスタンバイは、精神的には大変だと思います。実際経験しましたが、常に携帯電話を握りしめて行動しないといけないですし、行く準備を常にしていないといけないので、家にいたとしてもリラックスできませんでした。
全くスケジュールのない会社ではありませんが、拠点のある空港付近にパイロットが住まないといけないような会社では、既に予約の入っている日はパイロットを指定してスケジュールを固定し、固定された休みの日以外をスタンバイ、としている会社もあります
日用品の買い出しもドキドキです。
「休み」となっていても電話が鳴ることも…。
「休み」の日だとしても、あまり気持ちが休まらなかったのを覚えています。
僕としては、あまり好きになれない形態でしたが、このような形態を好む人も結構多数いました。
スケジュールのある会社
小型ビジネスジェット機を運航する会社でも、スケジュールを出す会社も存在します。
また、中型ビジネスジェット機や大型ビジネスジェット機を運航する会社は、大抵スケジュールがあり、パイロット側としては助かるかと思います。
スケジュールは会社により様々ですが、「5日働いて3日休み、3日働いて2日休みのローテーション」を組んでいたり、中型ビジネスジェット機や大型ビジネスジェット機を運航する会社だと、「2週間働いて2週間休み」「2週間働いて10日休み」「1ヵ月働いて1ヵ月休み」というようなスケジュールを組んでいる会社が多く見受けられます。
「2週間働く」や「1ヵ月働く」ということはどういうことなのでしょうか。
「2週間働く」を例にすると、文字通り、2週間働くのですが、2週間家に帰らない、と思っていただいていいいと思います。
実際このような会社で働いたことがあります。
なぜこのようなことになっているかというと、定期運航をしているエアラインのパイロットは、乗客の数に関わらず、決められた時間に決められた目的地に運航します。
ビジネスジェットは、お客さんがいない限り飛びません。そのため、数日おきにクルーチェンジをしていると、経費がかさむため、極力クルーチェンジをしないようにしています。
2週間の仕事日のうち、1日しか飛ばないこともあれば、ほぼ毎日飛ぶこともあります。会社がどれだけお客さんを見つけることができるか、にもよると思います。
すべてはお客さん次第です。
2週間働く、というときの内訳としては、
初日:自宅付近の国際空港から、乗務する飛行機のある都市まで飛行機などで移動。空港やホテルで一緒に乗務する乗務員と合流
2日目からはフライトが入ればフライト。あとはホテルスタンバイ
最終日:ホテルから近くの国際空港へ行き、自宅付近の空港まで飛行機などで移動
(「ホテルでスタンバイ」も「自宅でスタンバイ」も「スタンバイ」には変わりなく、スケジュール変更があれば、すぐに出発するのですが、僕の中では自宅でスタンバイよりも、気持ち的に「既に仕事に出ている」という状態の「ホテルでスタンバイ」のほうが、電話が来てすぐにホテルを出ることになっても特に苦痛ではありませんでした。自宅だと、どうしても色々と作業をしたりしてしまうので、「自宅スタンバイ」は精神面でキツイことがありました。途中までやっていたものを中断したりしないといけませんし。「何もしなければいいのでは?」と言われてしまいそうですが、自宅にいるとそうもいきませんでした…)
このようなスケジュールを組んでいるビジネスジェット運航会社は、本社とは別に、飛行機は本社とは関係のない空港を拠点としていたり、拠点となる空港を持っていない場合が多いです。
スイスに本社があるけれども、飛行機はロシアのモスクワベースだったり、本社はマルタ島にあるけれども、飛行機の運航はパリだったり、アムステルダムだったりします。
需要のある所に飛行機を置いておくほうが効率がいいですからね。
エアラインパイロットは、会社が拠点としている空港(複数の場合あり)付近に住むことが基本となっていますが、ビジネスジェットパイロットは、会社によっては引っ越しを必要としない会社もあり、とても助かります。このように、パイロットが会社の都合により拠点空港へ引っ越しする必要のないことを「Open Base」と言ったりします。
言葉の通り、ベースがないので、引っ越しをする必要がありません。既に家族がいたりするパイロットには助かりますね。
「拠点となる空港を持っていない」というのは、お客さんがいるところへ飛行機を飛ばす、ということです。
例えば、パリでお客さんを乗せてジュネーブまで行くとします。ジュネーブからどこかへ飛びたいお客さんを見つけるまで、ジュネーブから飛行機を無意味に動かさないか、ジュネーブから極力近い空港でお客さんを見つけて、なるべく空(カラ)の状態で飛行機を飛ばさないようにする会社もあります。
どのように組織を作るかは会社によりけりです。飛行機は飛ばない限り収益が発生しませんが、むやみやたらに空(カラ)の飛行機を飛ばしてしまうと、コストに圧迫されたりします。
マネージメント能力と、セールス能力、人脈などが大事なってくる世界です。
【海外でパイロット】ビジネスジェットパイロットのスケジュール まとめ
あまり知ることのできない「ビジネスジェットパイロットのスケジュール」どうだったでしょうか。
どちらがいいかは個人差があります。
僕としては、スケジュールのある会社+オープンベースがラクでした。やはりプライベートの時間をシッカリ確保したいので。
常にスタンバイはあまり好きになれませんでした。
人によっては「2週間も家を空けたくない」という人もいますし、「仕事のためなら引越しガンガンします‼」という人もいますよね。自分の好きなほうをみんな選択しているのではないかと思います。
ビジネスジェットのパイロットとして働く機会があるときには、このようなことも軽く頭の中に入れておいてください。
コメント