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Advanced UPRTトレーニング

Advanced UPRT パイロットのつぶやき
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航空法というのは、しょっちゅう変更があったりするので、色々と面倒だなぁ、と毎回思っているのですが、2019年末より新たなトレーニングがパイロットに追加されました。

エアラインなどだと、免許更新のタイミングでこれに関する座学やシムトレーニングがあったりするようです。

「Advanced UPRT」というものでUPRTとは

U:Upset

P:Prevention

R:Recovery

T:Training

の頭文字をとったものとなっています。

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誰が必要なトレーニング?Advanced UPRT

基本、タイプレーティングを保有していないパイロット全員が必要となります。

自家用操縦士は必要とはなりませんが、パイロットとして働きたい人や自家用操縦士でもジェット機など「タイプレーティングを取得する必要があるパイロット」には必要なトレーニング。

但し、現在保有しているタイプレーティングの取得が、施行前の場合には必要のないトレーニングとなっています。

現在EASAのトレーニングをしているパイロット学生は、既にこのトレーニングがプログラムに組み込まれているので、別途受講する必要はありません。

僕の場合、既にタイプレーティングを保有しているので、必要ないと言えば必要ないのですが、ここ最近では、副操縦士の募集要項に必ず「Advanced UPRT」が書かれているので、「所有していないよりはいいかな」ということで受けることにしました。

「必ず必要ではない」という立場ですが、弾かれる恐れもあるので、「持っておいたほうがいいかな」ということで取得することにしました。

何故必要になった?Advanced UPRT

2015年ごろからこのトレーニングが必要なのではないか、という話し合いがあったようです。

それ以前からも言われてはいましたが、本格的にトレーニングをすることを前提とした話し合いは2015年ごろだと言われています。

航空事故の多くは「ヒューマンエラー」となっていて、突如訪れる予期していない状況に陥った時に、身体が勝手に反応してしまい、飛行機にとっては不必要なインプットを人間側がしていたり、飛行機の姿勢をシッカリ制御しきれずに事故になってしまう事例が増えてきたためだと言われています。

左旋回中にストールしてしまい、右旋回をしようとして操縦桿を右に切ってしまうと、余計に左旋回してしまい、そのまま墜落するような事故が何度も起きていたりします。

身体が勝手に反応してしまうことを防ぎ、元に戻せるようにトレーニングをすることによって、事故を防いでいこう、という考えがあります。

どのようなことをするのか?Advanced UPRT

今までは「Basic UPRT」という形で、フライト過程でトレーニングがありましたが、スピンなどは実際に行わないでいました。

ですが、事故増加により「必要だよね」ということで始まったトレーニング。

どのようなことをすると「Advanced UPRT」の証明書を受け取れるのでしょうか。

座学 Advanced UPRT

まずは座学が5時間設定されています。

必要性の説明~航空力学の復習、スピンリカバリーの仕方、ストール回復の仕方など、既に勉強した項目が多いと思います。

習ったところの復習をしながらも、もう少し踏み込んだ航空力学の観点からみた事故の原因を話し合ったりもしました。

エアショーなどでの事故などは、実際の飛行機がどのような状態で墜落したのかをある程度見ることができるのですが、エルロンの状態を見てみると、左に旋回しながら墜落していく場合には、操縦桿が右に切られているのが分かりますが、左に急旋回しているときに右に操縦桿を切ってしまうと空力的にはマイナスになっていることなどを勉強したりしました。

「そういえば、こういうの勉強したな」とは思っていましたが、普段は考えないようなことをシッカリと復習できたのはよかったかな、と思います。

フライトトレーニング Advanced UPRT

座学の後は、実際に飛行機に乗ってスピンからの回復やUnusual Attitudeからの回復などを練習します。

アクロバット飛行機を使用する学校もありますし、セスナ152を使用する学校もあります。僕の場合はセスナ152を使用しました。

フライトトレーニングは3時間行うことが義務付けられています。

45分を4回に分けて行われました。

スティープターンを行い、30度傾けて、その後45度、60度と傾きを変化させていき、どのような姿勢になって、そこからラダーを加えてストールさせた状態からリカバリーをしたり、リカバリーをエルロンで無理やりやろうとするとどうなるか、というのを体験してみたり、スピンや1G、2G、0.5Gを体験したり、普段ではやらないようなことを体験してきました。

2Gの状態を作って、実際に腕がどのぐらい重たくなるのかを体験したり。そのようなことは普段のフライトでは体験できないので、いい経験になりました。

通常のフライトでは、yawを制御するために、すぐにyaw damperのスイッチを入れるのですが、それがない状態で、飛行機はどのように反応するのかを実際に体験したりするのは興味深かったです。

ラダーを両足で固定して動かないようにして、操縦桿だけを使用して旋回したり、左右に素早く動かしたときにどのように飛行機が反応するのかなどを体験したり。

右に操縦桿を傾けているのに、機種は左に行こうとしたり、座学ではある程度分かっていたことも、実際に体験すると身につくと思いました。

また、飛行機をストールさせつつも、適切なリカバリーを行わない場合、外の景色は変わらないのですが、高度は1000ft/m下降している状態を体験。
ずっとストールウォーニングが鳴っているのですが、適切なリカバリーを行わないと、ストールしながら高度がどんどん落ちていきます。でも目の前の外の景色は変わらない。不思議な体験でした。

人間とは不思議なもので、「計器を信用しろ」と言われているのですが、極限状態になってしまうと、目から得た情報や身体の感覚を重視してしまうことがあります。
外の景色が変わっていないのだから大丈夫だ」と思ってしまい、適切にリカバリーを行わないために、どんどん高度を落としてしまい、そのまま墜落することがあります。

ほかには、トラフィックパターン上で起こるであろう、ベースからファイナルに旋回時、オーバーシュートしたときを想定し、無理やり戻そうとすると、飛行機がどのような状態になるのかを体験。

左旋回をしつつ、オーバーシュートしたからと、左ラダーを踏み込むと「skidding turn」になってしまい、地上めがけてダイブしてしまうことになります。

ベースからファイナルの高度は約500ftAGLぐらいだと考えると、このダイブで一気に300ftほどロスすることは、セオリーでは知っていますが、実際に空で体験するとよく分かります。

ほんの一瞬で地上めがけてダイブしてしまうため、身体は操縦桿を思いっきり引こうとしてしまいますが、そうするとシッカリとリカバリーできていないため、次の問題が出てきたりします。ストールして、また高度を落とすと、もう墜落です。

リカバリーを学ぶことによって、飛行機の態勢を元に戻すことにより、Go-Aroundして着陸のやり直しを落ち着いて出来るようになります。

Advanced UPRTトレーニング まとめ

今回のトレーニングは、受けてみてよかったと思っています。

普段のフライトでは出来ないようなことを、実機で学べたのは良かったです。

高度が落ちてしまったとしても、リカバリーをすれば、地上に墜落する前に立て直しが可能な場合がほとんどです。

身体が勝手に反応しないように、手順をシッカリと身につけていれば、不意の状況でも対処できるのではないかと思われます。

飛行機に乗っていると分かりますが、下を見ながら何かを書いていて、ふと顔を上げると変な姿勢に飛行機がなっていたりするんですよね。そのようなときに焦って対処すると、悪い方向に行きますが、適切な対処をし、元の姿勢に戻せるように勉強しておくことは、今後のためにもとても大事なことです。

今回のトレーニングの成果を出せる日が来ないといいのですが、色々な姿勢からのリカバリーを学べたことで、状況次第でシッカリと対処できるのではないかと思います。

それにしても、スピンの回復を何度か行うと、気持ち悪くなりますね。乗り物酔いをする身としては、最後の方は少し気分が悪くなってしまいました。

アクロバット飛行は止めておこう…

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